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「私と看護」~第4回全国看護学生作文コンクール・佳作受賞~Part2

二人目の佳作受賞者は、看護学科2年 酒瀬川香美さんです 😉 023―「私と看護」―

 私が初めての病院実習で受け持った患者さんの話をしたい。その方は化学療法を受けていたが、高熱でふらついて腰椎を圧迫骨折してしまい、退院日が延びていた。意識はしっかりしており、ことある毎に優しく看護学生である私たちを気遣って下さる優しい方だった。話をしたいと言うと、にこやかに快諾して下さる。圧迫骨折によって退院が延びてしまい、ちゃんと注意していればよかった、早く帰りたい。そういう言葉とともに、時には目に涙を浮かべてひどく悲しそうな笑顔を零す。患者さんの気持ちがダイレクトに伝わってきて、こちらが思わず泣きそうになってしまった。

それから徐々に配膳や歯磨きの準備のお手伝いをさせて頂くようになり、患者さんの為に少しでも役立ちたいと思うようになった。血圧を測る時に、慌てていた私に「大丈夫、落ち着けばできるよ」と声をかけて下さった。その言葉が私の緊張をほどくと同時に、心は患者さんに気遣わせてしまうという申し訳なさで一杯になった。日が経つにつれ、その方は座った姿勢を少しずつ長く保てるようになり、短時間であれば立つこともできるようになった。最終日が来ると退院する姿を見られないことが残念であるとともに、もう会えないと思って切なくなってしまった。そんな私たちに患者さんはこう言った。「ある日私は40年ぶりに友達に再会した。本当に偶然だったの。だから、きっと貴方たちともまた会える。今度は病院じゃなくて、町中で会おう。貴方たちが資格に合格したら、新聞で名前をみつけてきっと思い出すから。大丈夫。」そしてお別れの時間がやってきた。皆泣きながら、ありがとうという気持ちを込めて精一杯のお辞儀をした。その後ペアで患者さんに最後の挨拶に行くと患者さんが握手をして下さった。初めて、しっかり手を握った。優しい手のひらだった。泣いてはダメだと自分を叱咤しても、どんどん涙が溢れてみっともない位ぼろぼろ泣いた。患者さんはぎゅっと手を握り締めて、立ったまま目を見て言って下さった。「貴方たちなら大丈夫」「礼儀もしっかりしてる」「あとは度胸だよ、試験頑張るんだよ」本当は私たちが励まさなきゃいけないのに、患者さんを支えなきゃいけないのは私たちなのに、という申し訳なさと寂しさと感謝の気持ちが混ざって、ただただありがとうございました、本当に貴方と会えてよかった、としか言えずに手を握った。最後にはもう患者さんの顔がぼやけて、視界が歪んでしまった。

患者さんの優しさと、病気や治療への不安、そして今後への不安、つらさを何よりも実感し、患者と向き合う看護師としての姿勢や気持ちを学んだ6日間だった。患者さんの為に少しでも役立ちたいという気持ちとお世話になった方々への感謝を忘れずに、これからも誠心誠意実習に取り組んでいこうと強く思う。